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2020年05月29日
「しきさい」が捉えた日本列島の季節変化

今回は、250m解像度で高頻度に観測できる「しきさい」が捉えた日本列島の春の季節変化の様子を紹介します。

図1は「しきさい」搭載の多波長光学放射計(SGLI)が2020年5月9日と5月20日に観測したデータから作成した北海道紋別郡滝上町北部(左上図の黄色枠内)のカラー画像です。 滝上町は芝桜が有名で、図1右図を見ると250m解像度の「しきさい」でも5月20日の時点では芝桜がピンク色に染まっている様子(赤枠内のピンク色の部分)が分かります。

図1 2020年5月9日と2020年5月20日の北海道紋別郡滝上町北部(左上図の黄色枠内)のカラー合成画像。赤:緑:青にSGLIのVN08(673.5nm):VN06(565nm):VN03(443nm)のチャンネルをそれぞれ割り当てた。

図2は2020年5月8日(左図)と2019年5月8日(右図)に観測したデータから作成した関東甲信越付近の画像です。 今年も昨年と同様に平野近くの森林では緑が濃くなってきているのが分かります。 また、この画像の主に富山県から長野県、新潟県、北関東にかけての山岳域に広がる白色の部分(赤色の楕円内)は積雪ですが、今年と昨年を比較すると今年の方が積雪範囲が狭くなっている様子が分かります。

図2 2020年5月8日と2019年5月8日の関東甲信越のカラー合成画像。赤:緑:青にSGLIのVN08(673.5nm):VN06(565nm)&VN05(530nm):VN04(490nm)&VN03(443nm)&VN01(380nm)のチャンネルをそれぞれ割り当てた。

図3左図は図2左図の黄色枠内の拡大図で、図3右図は赤矢印の場所におけるNDVI(Normalized Difference Vegetation Index)と呼ばれる指標(植生密度の高低を示す)の時系列変化を示したグラフです。 このグラフからは今年は昨年よりも植生密度が高くなる時期が早い事が分かります。今年は昨年よりも積雪量が少なかったか雪解けが早かった可能性が考えられます。

図3 図2左図の黄色枠内の拡大図(左図)とA、B、C点におけるNDVI時系列分布グラフ(右図)。

図4は、筑紫平野・熊本平野付近の2019年10月5日/11月5日/12月9日、2020年1月4日/2月6日/3月20日/4月30日/5月8日の観測画像です。 10月には農作物や植生等によるものと思われる緑色に見える箇所が11月から12月にかけて減り、2月から3月にかけて再び増えて5月にはまた減るというようなサイクルが見られる所があります(例えば図中の矢印の場所) 。 九州地方では 二毛作が行われている所も多いのでこの影響かもしれません。

図4 2019年10月から2020年5月にかけての筑紫平野から熊本平野にかけてのカラー合成画像。赤:緑:青にSGLIのVN08(673.5nm):VN06(565nm)&VN05(530nm):VN04(490nm)&VN03(443nm)&VN01(380nm)のチャンネルをそれぞれ割り当てた。

図5は、左図の赤矢印の場所におけるNDVI時系列変化を示したグラフです。 農作物や植生の違いによって年間の変化形状が異なる事が分かります。

図5 左図(図4の2020年5月8日カラー合成画像)の赤矢印点におけるNDVI時系列分布グラフ(右図)。

図6は、2018年秋から2019年初夏にかけてと2019年秋から2020年初夏にかけて観測したデータから作成した日本列島のカラー画像動画です。 年によって展葉の時期や積雪の範囲が異なる様子が良く分かります。

図6 2018年10月から2019年5月(左図)と2019年10月から2020年5月(右図)にかけて観測したデータを用いて作成した日本列島の画像。 1か月間の合成画像を作成し5日間隔で動画にした。展葉前の落葉樹林は茶色、展葉後の森林は緑色に見えており、積雪域や雲域は白く見えている。

「しきさい」のデータを用いて推定した植生指標データ(NDVIやEVI)や植物群落内の葉量を示したデータ(LAI)の年間変動や年々変動からは様々な情報が得られます。 「しきさい」は全球を観測しているのでこれらの情報は日本だけでなく地球規模で得られます。 JAXAでは今後も炭素循環の変動メカニズム解明や気候数値モデルの高精度化などに寄与するデータ作成・提供を進めていく予定です。