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- 2019年1月30日
- 宇宙から見たオホーツク海の流氷接近
2017年12月に打ち上げられ、2018年12月よりデータ提供を開始している気候変動観測衛星「しきさい」が、去年に引き続き、今年もオホーツク海から日本に接近する流氷の様子を捉えました。気象庁網走地方気象台では1月24日に知床に流氷が接岸したことを、29日には流氷が網走市内の海岸に到達する「流氷接岸初日」を発表しており、流氷シーズンが本格的に到来しました。
図1はしきさいが2019年1月30日にオホーツク海周辺を撮影した疑似カラー画像です。水雲は白色、氷雲は水色、海氷・流氷が青色に示されていて、流氷が北海道の北東、沿岸部に到達し、接岸している様子がわかります。また、サロマ湖も半分くらいまで結氷している様子が伺えます。
図2. しきさいが1月3日、4日、7日、8日、14日、23日、27日に撮影したオホーツク海周辺の疑似カラー画像※
- ※:赤、緑、青にSGLIのSW3(1630nm)、VN11(868.5nm)、VN8(673.5nm)を使用
図2はしきさいが2019年1月3日から数日おきにオホーツク海周辺を撮影した疑似カラー画像です。今年は北海道網走市において、陸地から沖合の流氷が肉眼で確認できる「流氷初日」を例年より8日早い13日に観測していますが、「しきさい」の画像からも1月初旬から流氷がオホーツク海を徐々に南下する様子が確認できます。このような時系列の変化を詳細に把握できるのは、「しきさい」による高頻度・高解像度観測機能の利点です。
図3. 複数の衛星が撮影した1月30日のオホーツク海周辺画像、左から順にGCOM-C/SGLI(しきさい)トゥルーカラー画像、疑似カラー画像(赤、緑、青にVN5(530nm), VN11(868.5nm), SW3(1630nm)を使用)、熱赤外画像、GCOM-W/AMSR-2(しずく)による海氷密接度、89GHz水平偏波・垂直偏波比
図3はJAXA/EORCのwebサイト「オホーツク海の海氷分布」で公開されている「しきさい」と「しずく」が撮影した1月30日の画像です。「しずく」のようなマイクロ波を使ったセンサは雲の影響を受けにくく、天候や昼夜に左右されずに地表面を観測できる特徴があります。「しきさい」に比べて解像度が粗い代わりに、一度に広範囲を撮影することができるため、「しきさい」よりもさらに高頻度な毎日の観測が可能です。つまり、「しきさい」や「しずく」といった複数の衛星を複合的に使うことで、日々の海氷の状態を時空間的に詳細に調べることができます。
積雪や海氷は白くアルベドが高いため、太陽光を効率的に反射します。また、特に海氷は海洋から大気への熱・水蒸気の輸送を遮断するなど、地球全体の気候に影響を与えています。中でもオホーツク海は、北半球の流氷(海氷)域の南限であり、比較的低緯度にもかかわらず海氷が存在するため、海氷がオホーツク海の環境や気候、生態系を特徴づける要素の一つになっています。また、海氷の底面では、アイスアルジーと呼ばれる微細藻類が繁殖し、海氷とともに南下することで、北海道沿岸に豊かな漁場を形成する要因となる一方で、海氷の流入は船舶の航行を妨げるなど、地球環境や人間社会に深く関わっています。
JAXA/EORCでは、このような海氷をはじめとした地球環境の変化の兆候をいち早く捉えるため、オホーツク海の海氷分布だけでなく北極海の海氷密接度の分布画像および海氷面積値情報を、地球環境監視webサイト「JASMES」で公開しています。また、外部機関と連携し、国立極地研究所が開設している北極域データアーカイブシステム「ADS」の衛星データビューア「ViSHOP」にもデータを提供しています。今後も引き続き、海氷や積雪など雪氷圏や極域の環境変動を多角的に監視していく予定です。